ドル高 – 米国株式市場に影響
記事のポイント
- 今年に入りドルインデックスは約15%上昇
- ドル高によりS&P500企業の売上が13兆円もダウン?
- バイデン大統領はドル高を歓迎
※記事内に登場する下記銘柄はSTREAMでお取引可能です。
・ICE半導体インデックスをベンチマークしているSOXL・SOXS
・GS(ゴールドマン・サックス)
FRBの急ピッチな利上げによりドル一強
※画像はtradingviewより
(2022年8月24日時点)
ドル一強の2つの理由
1. 金利差拡大
・ユーロ安が進んだ理由としては、米国との金利差の拡大がある。欧州中銀(ECB)は7月に利上げに着手、9月も追加利上げの公算だが、FRBはそれ以上のピッチで追加利上げを行うため、金利差は縮小しにくい。
・円安については、そもそも金融政策の方向性の違いがある。
欧州、米国共に記録的なインフレに対応するため、金融引き締めを急いでおり、大幅な利上げを行っている。
これに対し、日銀は、今の大規模な金融緩和を続ける姿勢を鮮明にしている。
この金融政策の違いから米国、欧米と日本の金利差が拡大し、より利回りが見込めるドルなどの外貨を買って、円を売る動きが強まっている。
2. 変数的要素
ロシアのガスプロムが欧州向け主要パイプライン「ノルドストリーム」のメインテナンスのため3日間稼働を停止する。
このため、8/23には欧州天然ガス先物が最大20%高となった。ドイツの先物電気価格は1年前に比べ14倍といわれている。ロシアは、今後も西側諸国への報復制裁の手段として、需要が高まる冬季に向けて燃料供給を引き続き利用すると見られる。供給ひっ迫で、燃料価格の一段の上昇も除外できず燃料危機の悪化が欧州経済の重しになると考えられ、実際にユーロ圏は経常収支が赤字に転じている。これらのことからユーロ売りに繋がったと考えられる。
上記の理由からドル買いが強まりドル1強の相場環境になっているのではないだろうか。
米国企業は悪いドル高による影響も
米金融大手クレディスイスの試算によれば、米ドルが他通貨に対して8~10%上昇すると、米企業の収益が平均1%下落する。これは、米国の製品やサービスの価格が現地の通貨建てで上昇して売れ行きに悪影響が及ぶことや、米企業の現地通貨による海外売上がドル建てで目減りしてしまうからである。
eToroのベン・ライドラー氏は
「株式指標であるS&P500企業の売上は、ドルの上昇により2022年だけでも1,000億ドル(約13兆7,000億円)も押し下げられる」と予想している。
米国の経済は、構造的にグローバルである。
事実、S&P 500企業では平均で、売上総計の29%を海外で生み出していると、米金融大手のゴールドマンサックスは推計する。そして、対象をS&P 500のIT部門の企業に限れば、売上総計の59%が海外でたたき出されている。国外売上が顕著に高いテック企業は為替変動の影響を特に受けやすいのである。
ネットフリックス:ドル高で15%の減益
この中でもネットフリックスは近年、米国内の会員数が減少しても、国外の会員数は伸び続け、全体の売上を伸ばしていた。
同社の売上全体に占める海外の割合は59%に達している。
このため、海外売上の多いネットフリックスの4~6月期売上は、為替変動がなかった場合に前年同期比13%伸びていたはずが、ドル高の影響で海外売上の3億3,900万ドル分(約463億円)がドル建てで目減りし、8.6%の上昇にとどまったのである。
為替差損などにより、4~6月期の営業利益は前年同期比15%近く下落し、15億8,000万ドル(約2,157億円)にとどまっている。
また、ドル高傾向が変わらないと予想されることから、7~9月期の売上予想は前年同期比5%の上昇に抑えられ、営業利益は12億5,000万ドル(約1,706億円)と、前年同期比の下落幅が29%に拡大する見込みである。これは、為替要因がなければ3%の落ち込みで済むはずだったものだという。
インフレ退治にはドル高が必須
「バイデン大統領のドルへの関心は非常に高い。インフレ圧力が心配なら、より強いドルは輸入物価を安く抑える効果がある」と語っている。
テック大手の決算が続々と発表されているが利上げにより「悪いドル高」についても注視する必要がある。インフレが長期化すると考えられているだけに半導体などのテック企業は厳しい時代がくるのではないだろうか。
米国株のお取引方法は、以下リンク先のページをご参照ください。
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※Bloomberg、日本経済新聞、日経XTECH、各種報道を基に筆者作成
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