投資コラム-保有している銘柄の決算を迎える – Part.2

 

前回のPart.1では実際の決算発表前後の値動きに着目して、決算内容との違和感について紹介しました。今回はその理由について考えてみたいと思います。

 

前回の記事:

 

なぜ決算の内容と株価が逆の動きをするのか

 

前回の記事の例を見ると、決算の内容から株価を予想することは困難に思えます。

このケースを考える際に、以下の視点を頭に入れておくことが重要になります

 

“決算の内容自体ではなく、他の参加者がこの決算についてどう考えているか”

 

決算はあらかじめ日程も決まっており、将来訪れることがみんな分かっているイベントになります。従って市場参加者はこの決算がどうなるかということを考えた上で決算発表日を迎えることになります。

 

他の市場参加者がどう考えているか?を知るためには主に2つの視点があります。

 

①客観的な情報から推測される定性的な決算の見通し

②定性的な見通しから推測される定量的な決算予想

③決算前までにその銘柄がどのような値動きをしたか

 

①客観的な情報から推測される定性的な決算の見通し

 

①は一般的な決算予想になります。今回のトヨタ自動車の例で考えて見ましょう。

 

<客観的事実から考えられる定性的な決算予想の例>

・新型コロナウイルスによるロックダウンにより、店舗が閉鎖し売上げが激減する

・雇用や設備など維持費は引き続きかかるため、売上の減少はそのまま利益減少に直結

・コロナ影響で外出する人が減るため、今後の自動車の需要減の可能性

・グローバル企業であるため、日本の状況よりも悪い海外の状況の影響を大きく受ける

 

以上のような内容は決算が出る前から定性的な情報として市場で予想されていると考えられます。

 

②定性的な見通しから推測される定量的な決算予想

 

②は定性的な見通しよりも具体的な数字まで落とし込んだ決算予想です。この決算予想は主に証券会社のアナリストと呼ばれるプロが毎回の決算を予想していることが多いです。また四季報などの外部の調査会社でも独自で決算を予想している会社があります。

 

<客観的事実から考えられる定量的な決算予想の例>

・店舗閉鎖により前年度同期に比べて売上が30%減少する

・売上の減少により営業利益が前年度同期に比べて50%減少する

 

<参考例>

IFIS株予報 – トヨタ自動車

https://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?action=tp1&sa=report_chg&bcode=7203

 

こうした内容を丁寧に追っていくことで、決算前の段階でこの銘柄の決算がどうなるか?というある種の市場の共通認識を読み取ることが可能であると言えます。

 

今回のトヨタ自動車の例では、決算前には定性的にも定量的にもとても悪い決算が出るだろうという事が市場参加者の中で共有された認識であったと考えられます。

 

③決算前までにその銘柄がどのような値動きをしたか

 

もう一つ重要な要素である③を見ていきましょう

 

③は単純な決算前の銘柄の値動きになります。アドバンテストの例で考えて見ましょう。

<参考例>

Quick Money World – アドバンテスト

https://moneyworld.jp/stock/6857/chart

 

新型コロナウイルスによる暴落で一時3,500円をつけた株価は反転後はそのまま一本調子で上昇し決算前には7,000円をつけています。

この値動きに関しては、

-各国の金融当局や政府の景気対策によりマーケット全体が上昇した。

-半導体セクターは他業種に比べて新型コロナウイルスによる需要減は少ないと考えられる。

など様々な要因が考えられると思います。

 

しかしここでは理由よりも、どのように動いたかという事実に目を向ける事が重要です。ここでの客観的な事実は以下になります。

 

“3月に一時3,500円であった株価は3ヶ月で約2倍の7,000円に到達し、年初来高値を更新した、高値圏のまま決算発表を迎えた”

 

このような株価の実際の動きは理由がなんであれ、決算の内容に対する期待を反映していることが多いです。つまり上昇しているという事実が今回は良い決算であろうという市場の期待を表していると言えます。

 

今回のアドバンテストの例では、コロナ禍で他の銘柄が安値で沈んでいる中で3月から株価が2倍になり年初来高値を更新しているということは決算のハードルは相当高いなという事が市場参加者の中で共有された認識であったと考えられます。

 

①、②、③について意識して、決算前に考えておくだけでも決算後に予想外の値動きで損をしてしまったということを減らす事ができるでしょう。

 

繰り返しになりますが、決算に臨む心構えとしては

 

“決算の内容自体ではなく、他の参加者がこの決算についてどう考えているか”

 

が重要になります。

 

次回は以上の内容を考えた上でどういう戦略で取引をすればいいかを考えてみましょう。

 

Part.3 記事:https://smartplus-sec.com/stream/blog/investment_columu3/