証券3.0とは何か?

本年5月6日に、日経ヴェリタス紙面に「証券3.0がやってくる」との見出しで特集が掲載されたことに続き、5月17日にはBS Japan モーニングプラス、6月6日にはNHK おはよう日本でも新しい証券サービスの潮流について特集が組まれています。

ここへきて、メディアで頻繁に目にするようになった「証券3.0」というキーワードですが、メディアではSNSやチャットが組み込まれた証券サービスやこれまでになかった利便性など新しい投資スタイルのビジネスモデルととらえられている印象があります。

実は「証券3.0」は、当社の証券サービスの目指すべき方向性として、これまでとのサービス変容を分かりやすく表現したキーワードとして使用し始めたものです。

証券3.0の解釈は、もちろん人それぞれでも構いませんが、当社としての考えをしっかりと述べておく必要があると考え、このブログポストを書くに至りました。

ネット証券の台頭と効率性追求がもたらしたもの

90年代後半から本格的なネット取引の時代となりました。新たに登場したネット証券はそれまでの対面証券と比較してアクセス性の高さと98年以降の手数料自由化を背景とした安価な委託手数料を強みに急拡大を遂げました。

しかし、ネット取引の効率性が高まるに従いネット証券間でも手数料競争が激化。規模が勝負を分けることになります。2000年代の後半にかけて多くのネット証券が合併を繰り返し、今では主要なネット証券は両手で数えられるほどに落ち着いています。

ネット証券の台頭は何をもたらしたのか?まず、あげられるのが委託手数料が安くなったことです。対面証券が主流だった20年前と比較して大幅に改善されました。また、チャートや取引ツールの高度化は目覚ましいものがあります。

しかし、その弊害ではないにしろ、究極にまで追求された効率化によって、いつの間にかネット証券サービスはどこもかしこも同じようなサービスになってしまったと思いませんか?

どこの証券会社の口座にログインしても、デザインやルック&フィールの違いはありますが、同じような画面構成となっています。

すると改めて気付かされるのが「証券サービスには差別性がない」こと。そして、有価証券の売買執行を提供する証券サービスは既に成熟期を迎えコモディティ化しているということです。

証券サービスを多様化させるために

しかし証券サービスの類似性は、仕方のないことなのでしょうか?当たり前過ぎて、疑おうとする人は少ないのかもしれませんが、当社はそうは考えていません。

他の業界を見れば、この10年でサービス多様化が進行していることは明らかです。
デバイスの進化、ネットワーク通信速度の高速化を背景に、音楽ストリーミングサービスや電子書籍の台頭、シェアリングエコノミーの拡大など新しいテクノロジーや概念が登場し、成熟しきった既存の枠組みや様式をディスラプト(破壊)しています。そして、私たちの生活は10年前と比較してよりパーソナライズされ、圧倒的に便利になってきました。

消費者向けのサービスが革新的な進化を遂げる中、証券サービスも変わらないといけなのではないか?そして多様化した証券サービスとは何か?そのような世界はどういう姿なのか?

この疑問への回答こそがスマートプラスが進める証券ビジネスプラットフォーム、BaaS(Brokerage as a Service)であり、私たちのヴィジョンです。

証券3.0で、証券サービスはもっと自由になる

究極までに効率化された証券サービスを証券2.0とするならば、スマートプラスが定義する証券3.0は、他の業界に見るように証券サービスが多様化された世界です。そしてスマートプラスは、BaaSを提供することで「証券」を全く新しい「サービス」としてもう一度昇華することが可能だと信じています。

売買執行機能、ミドル・バックシステムをパッケージ化しプラットフォームサービスとして提供することで、証券事業への初期投資額並びに運用コストは大幅に下がります。証券事業の収支構造に抜本的な変革を起こすこと。これこそがBaaSの真の狙いです。

収支構造に変化がもたらされると何が起こるのか?それは、これまで無視されきた、小さな投資ニーズへ対応した証券サービスが生まれる可能性が高まるのです。証券サービスは今よりもずっと多様化し、投資家が主役となるのです。

証券3.0で投資家が主役になる

勘違いしてほしくありませんが、対面でのコミュニケーションを求める投資家は依然として大多数でしょうし、これまでネット証券が進めてきた高機能かつ効率的な証券サービスを求める投資家はこれからも多く存在します。

そのため、それらと比較して証券3.0が優れているとか、新しいといった見方は適切ではありません。証券3.0は、これまで見過ごされてきた個人投資家のニーズにも焦点があたる新しい枠組みなのです。

証券3.0が実現された日本は、世界でも類を見ない自由な投資環境が実現されるでしょう。

次回のポストでは、証券3.0を実現するキーファクターを整理します。